ICM
ICMプレッシャー — かける側・受ける側
ICMは恐怖だ。だが恐怖は、向ける方向を選べる。君がそれを浴びる側に立つのか、浴びせる側に立つのか——終盤の勝敗は、ほぼここで決まる。
ICMプレッシャーとは、「飛びたくない」という相手の心理と$EVの非対称を突いて、フォールドを強要する圧力のことだ。本レッスンは、この圧力を かける側の技術 と 受ける側の防御 に分けて解剖する。両側を理解して初めて、君はどちらの側にも自在に回れる。
リスクプレミアム——受ける側に課される税
まず受け手の話から。ICM下でオールインをコールするとき、君には リスクプレミアム(RP) という上乗せ税が課される。
リスクプレミアム = ICM下で必要な勝率 − チップEV下で必要な勝率
例)あるジャムに対し
チップEVでは43%勝てればコールでブレイクイーブン
ICM下では53%必要
→ リスクプレミアム = +10%
このRP分だけ、コールレンジを締めなければならない。リスクプレミアムは、相手との相対スタックで激しく動く。
受け手=ショート、ジャム=ビッグスタック :RP +12〜18%(最も重い。極端に締める)
受け手=ミドル、ジャム=同程度 :RP +6〜10%
受け手=ビッグ、ジャム=ショート :RP +1〜3%(ほぼチップEV。広く取れる)かける側——フォールドエクイティが膨らむ条件
次に攻め手。ICM圧をかける側の利益の源泉は フォールドエクイティ(FE) だ。相手のRPが高いほど、相手は降りやすくなり、君のジャムは見せ手なしで利益を生む。
FEが最大化する条件:
① 自分のバストリスクが低い(自分のBFが低い)=ビッグスタック or 余裕あるミドル
② 相手のバストリスクが高い(相手のBFが高い)=賞金圏目前のミドル
③ 賞金の傾斜が急(ペイジャンプ直前)
→ この3条件が揃うと、相手はAQ・99 すら降りる。
君は実勝率を問わず、フォールドだけで$EVプラス。具体例で詰める。
場面:FTバブル、残り6人。あなた=チップリーダー(50BB)、SBに中堅(20BB)
あなたのアクション:BTNからA7oでジャム(or 強めのオープン)
中堅のコール判断:
チップEVなら 88・AJ でコールできるが、
RP+14%が乗り、必要勝率が跳ね上がる → 99・AK 未満は全フォールド
→ あなたのA7oは、相手のレンジの大半に対してノーショーダウンで勝つスタック別・攻守の立ち回り
ICMプレッシャーは、自分のスタックによって「かける」「受ける」の比重が変わる。
| スタック | 主な役回り | 立ち回り |
|---|---|---|
| ビッグ(35BB〜) | ほぼ常に「かける側」 | 中堅を標的に広くジャム/オープン。ショート同士の潰し合いは傍観 |
| ミドル(15〜30BB) | 攻守両用・最も繊細 | 下のショートには圧をかけ、上のビッグからの圧は重く受ける |
| ショート(〜12BB) | 受け身になりがちだが先手を取る | リンプ厳禁。先手ジャムで自分が「かける側」に回り、FEを取りにいく |
圧を受け切る——降りる勇気の数値化
最後に、受ける側の本質を渡す。ICM圧を「受け切る」とは、フォールドという行為を恐怖ではなく計算として実行することだ。
受け手のチェックリスト:
1. 自分のBF/RPは今いくつか(賞金圏との距離・傾斜で見積もる)
2. RP分だけコール閾値を締めたか
3. 相手のジャムレンジは、その締めた閾値を超えているか
→ 超えていなければ、AKでも降りる。それは弱さではなく規律だ「降りすぎてブラインドに溶ける」のがショートの典型死、「受けすぎて賞金圏前にバスト」がミドルの典型死。両者を分けるのは、恐怖をRPという数字に変換できているかの一点だ。漠然と怖がるのでも、無視するのでもない。いま課されている税率を測り、その分だけ締める。それができる者だけが、圧を浴びても折れずに賞金の階段を登る。
ICMプレッシャーは両刃の刃だ。かける側に回れば最強の武器、受ける側で測れなければ最大のリーク。君がどちらに立つかは、卓上で計算を続けられるかどうかで決まる。
このレッスンの要点
- リスクプレミアム=ICM必要勝率−チップEV必要勝率。受ける側はこの分だけレンジを締める
- RPは相対スタックで激変。ショートがビッグのジャムを受けるとRP+12〜18%
- かける側のFEは「自分のBF低・相手のBF高・傾斜が急」で最大化する
- 標的は「最もBFが高い相手」=賞金圏目前のミドル。効く相手にだけ圧を向ける
- ミドルは二正面。「下には強く、上には弱く」。降りる勇気はRPという数字で実行する