リショブレンジ — 再オールインの設計
オープンレイズが入った。君の前にチップが滑り込んでくる。手はAJo——コールするには中途半端で、降りるには惜しい。ここで三流はコールし、二流は降り、一流は被せる。
リショブ(re-shove/再オールイン) とは、誰かのオープンに対し3betジャムを撃ち込む行為だ。これはリスチールの一形態に見えて、設計思想がまったく違う。リスチールは「相手の盗みを盗み返す」心理戦の話。リショブは「どのハンドを、どのスタック深度で、ジャムという形に変換するか」というレンジ構築の技術だ。本章はその設計図を扱う。
コールでは負け、ジャムでは勝つハンド
リショブの出発点は、ハンドを役割で分類することだ。すべての手を「コール向き」「ジャム向き」「フォールド向き」に振り分ける。
コール向き :ポストフロップで優位を取れる手(中ポケット・スーテッドブロードウェイ)
ジャム向き :エクイティはあるがコールでは扱いづらい手(A5s〜A9o, KJo, T9s等)
フォールド :エクイティもブロッカーも乏しい手リショブレンジの主役は真ん中の層だ。A8oを考えてみよう。15BBでオープンにコールすると、フロップ以降を素のAハイ一枚で戦う羽目になり、ボードの大半で苦しい。だがジャムに変換すれば、(1)相手を降ろすフォールドエクイティ、(2)コールされてもAとブロッカー由来のショーダウンエクイティ、の二段構えになる。同じハンドが、形を変えるだけで勝てる手に化ける。
スタック深度別のリショブ設計
リショブが機能する窓は、スタック深度で厳密に決まる。深すぎても浅すぎても壊れる。
スタック深度(オープンに対する自分の実効スタック)
20BB超 :リショブ非推奨。ジャムが大きすぎ相手のコール閾値が締まらない
→ 3betノンオールイン or コールで対応
12〜18BB :リショブの黄金ゾーン。ジャムが効き、フォールドエクイティ最大
8〜11BB :自分から先撃ちジャム圏。被せるより先手ジャムを優先
8BB未満 :ほぼ全ハンド先手ジャム。リショブの概念が消える黄金ゾーンは12〜18BBだ。この帯域では、君のジャムは相手のオープン額+自分のスタックという「降りるには大きく、コールするには痛い」絶妙なサイズになる。20BBを超えると、ジャム額が相手にとって脅威になりすぎて——逆説的だが——相手のコールが慎重になりすぎ、ブラフを通す価値が減る。同時に自分も大きなスタックを一手に賭けるのが割に合わなくなる。
オープナーの『位置』でレンジを伸縮させる
誰のオープンに被せるかで、リショブレンジは2倍以上伸び縮みする。鍵はオープナーのレンジの広さだ。
オープナー別リショブ頻度(15BB・参考)
UTG オープン :狭くタイトに(相手レンジが強い → A5s, 99+ 等の精鋭のみ)
CO オープン :標準(A7s+, KTo+, 中ポケ)
BTN オープン :広く攻撃的に(相手は盗み狙い → A2s+, K9o+, スーコネ広く)
SB オープン :最も広く(ヘッズアップ的・相手レンジ最弱 → 上位40%超)ボタンやSBのオープンは「ブラインドを盗みにきている」薄いレンジだ。そこにジャムを被せれば、相手のレンジの大半は降りる。逆にUTGのオープンは強いレンジなので、コールされる前提で精鋭ハンドだけに絞る。相手の位置=相手のレンジ強度を読み、自分のリショブ頻度をスライドさせる。
ICMがリショブを締める/緩める
ここでICMが二方向に効く。リショブする側とされる側、両者のバブルファクターがレンジを動かす。
バブル直前のリショブ調整
自分が中堅→相手も中堅 :相手のコール閾値が締まる → リショブ大幅に緩められる
自分がショート :飛ぶリスク大 → 精鋭のみに締める(降り得を優先)
自分がチップリーダー :割らない原則 → リショブも保守的(漁夫の利を待つ)最も美味しいのは「自分も相手も中堅で、互いに飛びたくない」スポットだ。相手のコール閾値がICMで締まる分、君のフォールドエクイティが跳ね上がる。ここでは素の勝率30%台のハンドでもリショブが通る。逆に、自分がショートで降り得の側にいるなら、リショブは精鋭に絞り、無駄な激突を避けて繰り上がりを待つ。
まとめ——リショブは『変換』の技術
リショブの正体は、コールでは負ける手・降りるには惜しい手を、ジャムという形に変換して勝ち筋に変える作業だ。主役は中間層のハンド。窓は12〜18BB。レンジはオープナーの位置で伸縮し、ICMでさらに伸縮する。
これを使いこなせるかどうかが、終盤で「降りるか受けるか」の二択しか持たないプレイヤーと、第三の選択肢を常に握っているプレイヤーを分ける。AJoが滑り込んできたとき、君が反射的に「被せる窓か?」と問えるようになったなら、君はもう一段上に来ている。
このレッスンの要点
- リショブの主役は「コールでは弱く、ジャムでこそ機能する」中間層ハンド
- 価値はフォールドエクイティ+ショーダウンエクイティの合算で設計する
- 黄金ゾーンは12〜18BB。20BB超は3betノンオールインに持ち替える
- オープナーの位置=レンジ強度。BTN/SBには広く、UTGには精鋭のみ
- ブロッカー持ち(A・K1枚)はフォールドエクイティを上げる加点要素。優先して撃つ