ショートスタック対応
スタックが浅くなると、戦略は劇的にシンプルになります。「ジャム or フォールド」の二択フェーズで戦う、トーナメント特有の局面を学びます。
ショートスタックとは
スタックが BB の 20 倍以下 になった状態を「ショートスタック」と呼びます。
| BB 換算 | フェーズ | 戦略 |
|---|---|---|
| 100 BB+ | ディープ | 通常戦略 |
| 50〜100 BB | レギュラー | 標準戦略 |
| 20〜50 BB | ミドル | やや絞り目 |
| 15〜25 BB | ショート | ジャム比率が増える |
| 〜 15 BB | 緊急 | ジャム or フォールド |
| 〜 10 BB | 死活 | より広いジャム |
ショートスタックは主にトーナメントで頻発しますが、キャッシュゲームでも「リバイ直前」の局面で発生します。
なぜ戦略が変わるか
ショートスタックでは:
- 3 ベット → コール で 30 BB のポット → 自分の残りスタック 5 BB → 実質ジャム確定
- 「微調整したベット」が機能しない
- ジャム or フォールド の二択がシンプルかつ正解
オープンサイズの調整
| スタック | 推奨オープンサイズ |
|---|---|
| 50 BB+ | 2.5〜3 BB(標準) |
| 30〜50 BB | 2.2〜2.5 BB |
| 20〜30 BB | 2〜2.2 BB |
| 12〜20 BB | 2 BB(ミニマム) |
| 〜 12 BB | オープン or ジャム |
スタックが浅くなるほど、オープンサイズも縮める。理由:
- 大きく開けてフォールドされても、リターンが小さい
- 大きく開けると 3 ベットジャムされてコール強要
ジャムレンジ:「Nash Equilibrium(ナッシュ均衡)」
15 BB 以下では「ナッシュチャート」と呼ばれる、ジャム or フォールドの最適表が存在します。
15 BB のオープンジャムレンジ(UTG 想定)
- ペア:55+
- A スーテッド:A8s+
- A オフスーテッド:AJo+
- K スーテッド:KJs+
- スーテッドコネクター:JTs+
10 BB のオープンジャムレンジ(UTG 想定)
- ペア:22+
- A スーテッド:全部
- A オフスーテッド:A7o+
- K スーテッド:K9s+
- スーテッドコネクター:T9s+
5 BB のオープンジャムレンジ(UTG 想定)
- ペア:22+
- A 全部、K 全部
- Q オフスーテッド:Q9o+
- スーテッドコネクター:65s+
- かなり広い(=任意のハンドで OK レベル)
スタックが浅いほど、レンジが広がる 「ジャム緩和」 の数学。
ジャムコールレンジ
オープンジャムされたとき、自分がコールする範囲:
自分のスタック 30 BB、相手 15 BB のジャム
- ペア:77+
- AQs+, AKo
- 約 4〜6 % のハンド
自分のスタック 30 BB、相手 10 BB のジャム
- ペア:55+
- AT+, KQs, KJs
- 約 8〜10 %
自分のスタック 30 BB、相手 5 BB のジャム
- ペア:22+
- A2+, K9+
- 約 25 %(ポット・オッズ良好)
ポット・オッズに応じてコールレンジを伸縮します。
ICM の考慮(次のレッスンで詳細)
ショートスタックがオールインするとき、トーナメントでは ICM(Independent Chip Model) を考慮します。
- ICM = 各順位の経済価値
- ファイナルテーブル近くでは「降りる」価値が高い
- 「プラス期待値だが、ICM 的にマイナス」のジャムは控える
ICM の詳細は Phase 6 のレッスン 91-93 で扱います。
ショートスタックの心理戦
① 「カバーしている」相手の圧力
- 自分より大きいスタックの相手は、ジャムで圧力をかけてくる
- 「降りるなら降りる、コールするなら覚悟」と即断必要
② バブル戦略
- 入賞圏ボーダー付近では、ジャムの効果が増す
- 「コールしたら出れない」プレッシャーで相手が降りやすい
③ 焦りの抑制
- スタックが減ると焦ってジャム連発しがち
- 「1 周だけ我慢する」ことで、より良いハンドが来る
ライブとオンラインの差
| 環境 | ショートスタック頻度 |
|---|---|
| オンライン MTT | 頻繁(早いブラインドアップ) |
| ライブ MTT | 中盤以降に頻繁 |
| キャッシュ | 稀(リバイで回復) |
オンラインでは「ナッシュチャート」を覚えるだけで、ショートスタック戦略の 80 % は完成します。
ナッシュチャートの覚え方
完璧に覚えるのは大変なので、「目安レンジ」を体で覚える のがコツ:
| スタック | 目安レンジ |
|---|---|
| 15 BB | トップ 15 % |
| 10 BB | トップ 25 % |
| 7 BB | トップ 35 % |
| 5 BB | トップ 45 % |
| 3 BB | トップ 60 % |
| 1 BB | ほぼ any 2 |
詳しいチャートは「[ナッシュチャート]アプリ」「ICMizer」などで確認可能。
「ジャム or フォールド」の練習法
オンラインの SNG(シットゴー)で意図的にショートまで落とす:
- 通常戦略でプレイ
- ブラインドアップで自然にショート化
- ジャム判断を一つ一つ言語化
- 振り返り(=セルフレビュー)
これを 1 ヶ月続けると、ショート戦略が体に染み込みます。
練習:ショートジャム判断
各シチュエーション、ジャムすべきか?
- UTG、スタック 12 BB、ハンド K♠ J♣
- BTN、スタック 8 BB、ハンド 8♥ 7♠
- BB、自分 15 BB、CO 7 BB ジャム、ハンド A♦ 9♦
- SB、自分 20 BB、BB 12 BB(タイト)、自分のターン、ハンド T♣ T♦
答え合わせ
- ジャム(KJ は 12 BB ジャム範囲)
- ジャム(87o は 8 BB のジャム広範囲)
- コール(A9o は対 7 BB ジャムに対するコール範囲)
- オープン → 4 ベット ジャム待ち or 直接ジャム(TT は強烈、20 BB なら通常レイズか直接ジャム両方アリ)
用語まとめ
- ショートスタック:BB の 20 倍以下のスタック
- ジャム:オールイン(=ジャミングまたはプッシュ)
- ナッシュ均衡:ジャム or フォールドの最適頻度
- カバー:相手より多いスタックを持つ状態
- ICM:Independent Chip Model、各順位の経済価値
このレッスンの要点
- 15 BB 以下では「ジャム or フォールド」の二択がシンプルかつ正解
- スタックが浅くなるほどジャムレンジが広がる
- ナッシュチャートで標準レンジを暗記
- ICM の考慮はファイナルテーブル付近で重要
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