レッスン 47 / 100 Phase 3:ハンドレンジ編

プリフロップ EV の感覚

「このハンド、プレイすると長期でいくら儲かるか/損するか」── EV(期待値)の感覚を身につけると、迷いがなくなります。

EV(期待値)とは

EV = Expected Value、「長期的に同じ判断を繰り返したときの平均利益/損失」。

  • EV +0.5 BB のアクション = 1 回ごとに平均 0.5 BB の利益
  • EV -0.3 BB のアクション = 1 回ごとに平均 0.3 BB の損失
  • EV 0 = 損も得もしない(フォールドが基準点)

ポーカーは「EV プラスのアクションを継続する」ことで勝つゲームです。

主要ハンドのプリフロップ EV

シミュレーション結果(100BB キャッシュ、6max、全プレイヤー GTO):

UTG ポジション

ハンドEV(BB / 100ハンド)
AA+18.5
KK+13.8
QQ+10.2
JJ+7.5
TT+5.2
99+3.8
AKs+9.5
AKo+6.8
AQs+5.2
76s-2.5
A2o-3.0

BTN ポジション

ハンドEV(BB / 100ハンド)
AA+24.5
KK+18.5
QQ+14.8
JJ+11.2
99+7.8
22+1.2
AKs+14.5
76s+4.5
A2o+1.0
K7o+0.5

「UTG では EV マイナスでも、BTN では EV プラス」のハンドが多数あります。これがポジションの威力。

「フォールドより EV 0 以上」が参加基準

レンジ表に含まれるハンドは、すべて 「フォールド(=EV 0)よりプラス」 という基準で選ばれています。

  • EV +0.1 BB のハンド:参加するが、ほぼ拮抗(=「ボーダー」)
  • EV +2.0 BB のハンド:明確にプラス
  • EV +5.0 BB のハンド:強烈なプラス

「BTN K7o」は EV +0.5 BB という微弱なプラス。これがレンジの 下限 です。

「ボーダーハンド」の扱い

ボーダーハンド(EV +0.1〜0.5 BB)は、状況によってプラス・マイナスが入れ替わります:

プラスに振れる要因

  • 相手のフォールド率が高い
  • 自分のスタックが深い
  • アンティ付き
  • ボードが自分のレンジに有利

マイナスに振れる要因

  • 相手が 3 ベット多用
  • 相手がコール過多(=ポストフロップで難しい)
  • 自分がイメージ悪い(=ブラフ効かない)

ボーダーハンドは「状況次第で外す」のが正解です。

EV 計算の簡易例

具体的な計算してみましょう。

シチュエーション

  • BTN で 2.5 BB オープン
  • SB と BB がフォールド確率 65 %(合計)
  • 自分のハンド:87s
  • フォールドエクイティのみで EV を計算

計算

  • 成功時利益:1.5 BB(SB + BB)
  • 成功確率:65 %
  • 失敗時:ポット 6 BB(SB + BB + 自分の 2.5 BB + 相手のコール 2.5 BB)、フロップ以降の勝率約 35 %
  • 失敗時 EV:6 × 0.35 - 2.5(自分のオープン額の損失) = 2.1 - 2.5 = -0.4 BB

合計 EV

EV = 0.65 × (+1.5) + 0.35 × (-0.4) = 0.975 - 0.14 = +0.84 BB

つまり「BTN 87s は EV +0.84 BB」程度のプラスハンド。

直感的に EV を判定する 5 つの問い

毎ハンド計算するのは不可能。代わりに以下を意識:

① ポジションは IP か OOP か?

  • IP = +1〜3 BB プラス側にシフト
  • OOP = -1〜2 BB マイナス側にシフト

② 相手のフォールド率は?

  • 高い(=タイト)= プラス側
  • 低い(=ルース)= 弱いハンドはマイナス側

③ スタックは深いか浅いか?

  • 深い = ナッツポテンシャルあるハンド(SC, ペア)が +
  • 浅い = ジャム or フォールド、ナッツポテンシャル不要

④ ハンドのナッツ可能性は?

  • ナッツ可能性高 → EV プラス補正
  • ナッツ可能性低(弱い片寄り A、弱い K)→ マイナス補正

⑤ ボード予測有利性

  • 自分のレンジに有利なボード(=「レンジアドバンテージ」)が出やすい状況か
  • 相手のレンジに有利なボードが出やすいなら、参加を控える

「EV +0.5 BB」を 100 回繰り返す感覚

EV +0.5 BB のアクションは、100 回繰り返せば +50 BB
1 セッション 200 ハンドで EV +0.5 BB のアクションが 30 回あれば、+15 BB の利益。
これがポーカーの「チリツモ収益」の正体です。

逆に、毎ハンド EV -0.3 BB のアクションを混ぜると、100 ハンドで -30 BB の損失。
1 ハンドの小さい間違いの積み重ね」が長期勝率を決めます。

「マイナス EV だが正解」の場面

実は、明らかに EV マイナスでも正解 の場面があります:

バランス調整

  • 自分のレンジを読まれないために、レンジ下限を意図的に入れる
  • 短期 EV は -0.2 BB だが、長期メタゲームではプラス

ICM 補正

  • トーナメントでは、チップの 100 % 価値 ≠ 経済価値
  • バブル付近の「フォールド」は EV マイナスだが ICM 的にプラス

これらは Phase 6 で扱います。初心者の段階では「短期 EV = 長期 EV」と考えて OK。

EV 改善のロードマップ

段階 1:フォールドを正しくする

  • ボーダー以下のハンドを必ず降りる
  • 「コール過多」を断つ → EV 大幅改善

段階 2:オープンを正しくする

  • ポジション別レンジを暗記
  • リンプ禁止 → EV 改善

段階 3:3 ベットを正しくする

  • バリュー + ライトのバランス
  • ライト 3 ベットで +1〜2 BB / 100 改善

段階 4:ポストフロップを学ぶ

  • Phase 4 以降のテーマ
  • ここから上達曲線が急になる

練習:EV 感覚クイズ

各ハンドの EV、プラス/マイナス/ほぼゼロのどれ?

  1. UTG で QJo
  2. BTN で 22
  3. BB で K9o(vs UTG オープン)
  4. BTN で 32s
  5. CO で AKo
答え合わせ
  1. マイナス(QJo は UTG レンジ外)
  2. プラス(22 はセットマイニングで BTN なら +1〜2 BB)
  3. マイナス(K9o は BB vs UTG ではレンジ外)
  4. プラス(弱め)(32s は BTN スティール要員、EV +0.3 BB 程度)
  5. 大プラス(AKo は CO で +6 BB / 100 程度)

用語まとめ

  • EV:Expected Value、期待値
  • ボーダーハンド:EV +0.1〜0.5 BB の微妙なプラスハンド
  • チリツモ収益:小さい EV プラスの積み重ね
  • フォールドエクイティ:相手が降りる確率による収益

このレッスンの要点

  • 全アクションは EV で測れる(フォールドが基準点 0)
  • ボーダーハンドは状況次第でプラス・マイナスが入れ替わる
  • ポジション・相手のタイプ・スタック・ナッツ可能性で判定
  • EV +0.5 BB の積み重ねが長期勝率を作る

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