プリフロップ EV の感覚
EV(期待値)とは
EV = Expected Value、「長期的に同じ判断を繰り返したときの平均利益/損失」。
- EV +0.5 BB のアクション = 1 回ごとに平均 0.5 BB の利益
- EV -0.3 BB のアクション = 1 回ごとに平均 0.3 BB の損失
- EV 0 = 損も得もしない(フォールドが基準点)
ポーカーは「EV プラスのアクションを継続する」ことで勝つゲームです。
主要ハンドのプリフロップ EV
シミュレーション結果(100BB キャッシュ、6max、全プレイヤー GTO):
UTG ポジション
| ハンド | EV(BB / 100ハンド) |
|---|---|
| AA | +18.5 |
| KK | +13.8 |
| +10.2 | |
| JJ | +7.5 |
| TT | +5.2 |
| 99 | +3.8 |
| AKs | +9.5 |
| AKo | +6.8 |
| AQs | +5.2 |
| 76s | -2.5 |
| A2o | -3.0 |
BTN ポジション
| ハンド | EV(BB / 100ハンド) |
|---|---|
| AA | +24.5 |
| KK | +18.5 |
| +14.8 | |
| JJ | +11.2 |
| 99 | +7.8 |
| 22 | +1.2 |
| AKs | +14.5 |
| 76s | +4.5 |
| A2o | +1.0 |
| K7o | +0.5 |
「UTG では EV マイナスでも、BTN では EV プラス」のハンドが多数あります。これがポジションの威力。
「フォールドより EV 0 以上」が参加基準
レンジ表に含まれるハンドは、すべて 「フォールド(=EV 0)よりプラス」 という基準で選ばれています。
- EV +0.1 BB のハンド:参加するが、ほぼ拮抗(=「ボーダー」)
- EV +2.0 BB のハンド:明確にプラス
- EV +5.0 BB のハンド:強烈なプラス
「BTN K7o」は EV +0.5 BB という微弱なプラス。これがレンジの 下限 です。
「ボーダーハンド」の扱い
ボーダーハンド(EV +0.1〜0.5 BB)は、状況によってプラス・マイナスが入れ替わります:
プラスに振れる要因
- 相手のフォールド率が高い
- 自分のスタックが深い
- アンティ付き
- ボードが自分のレンジに有利
マイナスに振れる要因
- 相手が 3 ベット多用
- 相手がコール過多(=ポストフロップで難しい)
- 自分がイメージ悪い(=ブラフ効かない)
ボーダーハンドは「状況次第で外す」のが正解です。
EV 計算の簡易例
具体的な計算してみましょう。
シチュエーション
- BTN で 2.5 BB オープン
- SB と BB がフォールド確率 65 %(合計)
- 自分のハンド:87s
- フォールドエクイティのみで EV を計算
計算
- 成功時利益:1.5 BB(SB + BB)
- 成功確率:65 %
- 失敗時:ポット 6 BB(SB + BB + 自分の 2.5 BB + 相手のコール 2.5 BB)、フロップ以降の勝率約 35 %
- 失敗時 EV:6 × 0.35 - 2.5(自分のオープン額の損失) = 2.1 - 2.5 = -0.4 BB
合計 EV
EV = 0.65 × (+1.5) + 0.35 × (-0.4) = 0.975 - 0.14 = +0.84 BB
つまり「BTN 87s は EV +0.84 BB」程度のプラスハンド。
直感的に EV を判定する 5 つの問い
毎ハンド計算するのは不可能。代わりに以下を意識:
① ポジションは IP か OOP か?
- IP = +1〜3 BB プラス側にシフト
- OOP = -1〜2 BB マイナス側にシフト
② 相手のフォールド率は?
- 高い(=タイト)= プラス側
- 低い(=ルース)= 弱いハンドはマイナス側
③ スタックは深いか浅いか?
- 深い = ナッツポテンシャルあるハンド(SC, ペア)が +
- 浅い = ジャム or フォールド、ナッツポテンシャル不要
④ ハンドのナッツ可能性は?
- ナッツ可能性高 → EV プラス補正
- ナッツ可能性低(弱い片寄り A、弱い K)→ マイナス補正
⑤ ボード予測有利性
- 自分のレンジに有利なボード(=「レンジアドバンテージ」)が出やすい状況か
- 相手のレンジに有利なボードが出やすいなら、参加を控える
「EV +0.5 BB」を 100 回繰り返す感覚
EV +0.5 BB のアクションは、100 回繰り返せば +50 BB。
1 セッション 200 ハンドで EV +0.5 BB のアクションが 30 回あれば、+15 BB の利益。
これがポーカーの「チリツモ収益」の正体です。
逆に、毎ハンド EV -0.3 BB のアクションを混ぜると、100 ハンドで -30 BB の損失。
「1 ハンドの小さい間違いの積み重ね」が長期勝率を決めます。
「マイナス EV だが正解」の場面
実は、明らかに EV マイナスでも正解 の場面があります:
バランス調整
- 自分のレンジを読まれないために、レンジ下限を意図的に入れる
- 短期 EV は -0.2 BB だが、長期メタゲームではプラス
ICM 補正
- トーナメントでは、チップの 100 % 価値 ≠ 経済価値
- バブル付近の「フォールド」は EV マイナスだが ICM 的にプラス
これらは Phase 6 で扱います。初心者の段階では「短期 EV = 長期 EV」と考えて OK。
EV 改善のロードマップ
段階 1:フォールドを正しくする
- ボーダー以下のハンドを必ず降りる
- 「コール過多」を断つ → EV 大幅改善
段階 2:オープンを正しくする
- ポジション別レンジを暗記
- リンプ禁止 → EV 改善
段階 3:3 ベットを正しくする
- バリュー + ライトのバランス
- ライト 3 ベットで +1〜2 BB / 100 改善
段階 4:ポストフロップを学ぶ
- Phase 4 以降のテーマ
- ここから上達曲線が急になる
練習:EV 感覚クイズ
各ハンドの EV、プラス/マイナス/ほぼゼロのどれ?
- UTG で QJo
- BTN で 22
- BB で K9o(vs UTG オープン)
- BTN で 32s
- CO で AKo
答え合わせ
- マイナス(QJo は UTG レンジ外)
- プラス(22 はセットマイニングで BTN なら +1〜2 BB)
- マイナス(K9o は BB vs UTG ではレンジ外)
- プラス(弱め)(32s は BTN スティール要員、EV +0.3 BB 程度)
- 大プラス(AKo は CO で +6 BB / 100 程度)
用語まとめ
- EV:Expected Value、期待値
- ボーダーハンド:EV +0.1〜0.5 BB の微妙なプラスハンド
- チリツモ収益:小さい EV プラスの積み重ね
- フォールドエクイティ:相手が降りる確率による収益
このレッスンの要点
- 全アクションは EV で測れる(フォールドが基準点 0)
- ボーダーハンドは状況次第でプラス・マイナスが入れ替わる
- ポジション・相手のタイプ・スタック・ナッツ可能性で判定
- EV +0.5 BB の積み重ねが長期勝率を作る