はじめに:この記事で扱う「MP」について
本サイトの6-max(6人打ち)の標準表記では、この記事が扱う席は**HJ(ハイジャック)と呼んでいます。一方、9-max(9人打ち)のテーブルではUTGのすぐ後ろに座る数席(UTG+1〜MP)を合わせてMP(ミドルポジション)**と呼ぶのが一般的です。
この記事は9-maxの文脈での「MP」を主役に据えて解説します。前に何人も座っている9人テーブルならではの判断(UTGのオープンに対する対応など)を丁寧に扱うためです。6-maxしかプレーしない場合は、本記事の内容をそのままHJの戦略として読み替えて問題ありません。本サイトのオープンレンジ実測値(後述の21.7%を含む)は6-max・9-maxのどちらで見ても同じ「UTGの次に座る中間の攻撃的な席」の数値として扱っています。
この席の本質:MPは「前に人が残ったまま決める中間席」
MPは、UTGほど極端にタイトである必要はないものの、BTNやCOのように後ろの人数が少ないわけでもない、中間的な性質を持つ席です。UTGのオープンという先行情報を受け取れる場面がある一方で、自分がオープンする時も、コールする時も、まだCO・BTN・SB・BBの4人が後ろに残っています。
この「前の情報はあるが、後ろのリスクもまだ多い」という二重の制約が、MPというポジションの本質です。UTGより広く、COより狭いレンジで参加しつつ、UTGのオープンへの対応・自分の3ベット被弾への対応という2つの判断軸を持つ必要があります。
この記事は「オープンレンジの数値→UTGオープンへの対応→後ろから3ベットされた時→フロップ以降→よくある間違い→具体ハンド例→FAQ」の順に読み進めれば、MPというポジションの判断を一通り自分の中で組み立てられる構成にしています。数値だけを知りたい場合は次章の早見表、実戦の押し引きに直結する部分だけ知りたい場合は「UTGオープンへの対応」以降から読んでも独立して理解できるようにしてあります。
MPのオープンレンジ:約21.7%
本サイトのGTOベースの実測レンジでは、ポジション別オープン率は次の通りです。MPは配られたハンドの**約21.7%**でオープンに参加します。
| ポジション | オープン率の目安 |
|---|---|
| UTG(最前) | 約17.5% |
| MP(ミドル) | 約21.7% |
| CO(カットオフ) | 約27.9% |
| BTN(ボタン) | 約40.6% |
| SB(スモールブラインド) | 約34.5% |
UTGよりは4ポイントほど広く、COよりは6ポイントほど狭い、ちょうど中間の数値です。前に座っている人数がゼロ(UTGと同じく誰も参加していない状態からのオープン)である一方、後ろにはまだ4人が残っているという構造が、この「中間の広さ」の理由です。
標準レンジの中身(100BB想定)
- ペア:55-AA(全ペア)、44・33・22は約50%の混合頻度で参加
- Aスーテッド:A9s-AKs(全種類)、A2s-A5s(全種類)※A6s-A8sは非参加
- Kスーテッド:KTs-KQs
- Qスーテッド:QTs-QJs
- Jスーテッド:JTs
- Tスーテッド:T9s
- 9スーテッド:98s
- 8スーテッド:87s
- 7スーテッド:76s(約50%の混合頻度)
- オフスーテッド:ATo-AKo(全Aオフ)/KJo-KQo/QJo
UTGのレンジと比べると、A9s・A2s-A5s・KTs・QTs・98s・87sなど、UTGでは参加しないスーテッドハンドが新たに加わります。一方でA6s-A8sのような中間のAスーテッドは抜けているのが特徴で、「強いブロッカー(A2s-A5s)か、キッカーの強いA(A9s以上)」という両端を優先し、中間は絞るという組み方になっています。開くハンドの一覧表そのものはMPのオープンレンジ(レッスン33)で図解しているので、初めての人はそちらで視覚的に確認してから本記事の実戦対応に進むのがおすすめです。
オープンサイズは2.5BBが標準
サイズはBTN・COと同じく2.5BB程度が基本です。後ろの人数が多いポジションほどオープンサイズを大きくする理由は薄く、「ハンドの強さで絞り、サイズは標準的に保つ」のがMPの基本姿勢です。ディフェンスの広いプレイヤーが後ろに複数いると分かっている場合のみ、3BB程度への調整を検討します。
UTGオープンへの対応
MPの最大の特徴は、UTGがオープンしたかどうかという先行情報を受け取った上で判断できる点です。UTGのオープンレンジ自体が全ポジション中で最もタイトな約17.5%であるため、UTGがオープンしてきた時点で「かなり強いハンド帯」だと見立てられます。
| 対応 | 該当ハンドの目安 |
|---|---|
| 3ベット | QQ+, AKs, AKo(バリュー中心)/JJ・AQs・A5sは約50%の混合頻度でライト3ベットに混ぜる |
| コール | TT・99, AJs・ATs, KQs/JJ・QJs・JTs・AQoは約50%の混合頻度でコールに残す |
| フォールド | 上記に該当しない大半のハンド |
3ベットする場合は、QQ+・AKs・AKoのバリュー中心に、JJ・AQs・A5sを一定割合混ぜたライト3ベットを組み合わせます。A5sはAのブロッカーを持ち、コールされてもフロップでナッツ級のドローや隠れたエースヒットを狙える構成のため、3ベットレンジ全体が「プレミアムだけ」と読まれるのを防ぐ役割を持ちます。3ベットとは・ライト3ベット・3ベットブラフの基礎はコラムを参照してください。
UTG以外の前のポジションからオープンが入ってきた場合(実質的には存在しませんが、9-maxでUTG+1などさらに早い席からのオープンを想定する場合)も基本的な考え方は同じです。オープナーのポジションが早いほどレンジは強いと見立て、コール・3ベットの基準を一段絞るのが原則です。
後ろから3ベットされた時
MPが自分でオープンした場合、後ろにはCO・BTN・SB・BBの4人が残っています。3ベットしてくる相手がCO・BTNか、SB・BBかによって、ポストフロップで自分がIPになるかOOPになるかが変わるため、対応も分けて考える必要があります。
CO・BTNから3ベットされた場合(ポストフロップはOOP)
3ベッターは自分より後ろの席なので、ポストフロップは相手が最後に行動します。つまりMPは常にアウトオブポジション(OOP)で受けることになり、コールの基準はやや厳しめに見る必要があります。
- 4ベット:QQ+, AKs。AKo・A5sは約50%の混合頻度でライト4ベットに混ぜる
- コール:JJ・TT・AQs・KQs。99・AJs・AQoは約50%の混合頻度で残す
- フォールド:それ以外
SB・BBから3ベットされた場合(ポストフロップはIP)
ブラインドはポストフロップで必ず先に行動するため、SB・BBから3ベットされた場合はMPがインポジション(IP)を保てます。同じ強さのハンドでも、この場合はコールを一段広げやすくなります。
- 4ベット:CO・BTNから受けた場合と同じ基準(QQ+, AKs中心にAKo・A5sを混合)
- コール:JJ・TT・AQs・KQsに加え、JTsまで含めて広げやすい
- フォールド:それ以外
プリフロップGTOトレーナーでは、実際にこの3ベット対応を出題形式で反復できます。
フロップ以降:MPは「相手次第でIP・OOPが入れ替わる」席
BTNが必ずIP、SBが必ずOOPになるのと違い、MPのポストフロップは相手が誰かによってIP・OOPが入れ替わるという中間的な性質を持ちます。UTGに対してはIP、CO・BTNに対しては常にOOP、SB・BBに対してもOOPです。実戦では「後ろから参加された場合は基本的にOOPになりやすい」と捉えておくのが安全です。
自分がオープンしてヘッズアップになった場合
相手がUTGだけの場合はIPを保てますが、CO・BTN・ブラインドがコールしてきた場合はOOPになります。Cベット頻度はBTNの70%以上ほど高くは設定できず、60%前後を目安に、ボードテクスチャーとの噛み合わせを見て打ち分けるのが基本です。
- ドライなボード(K72レインボーなど):IPの場面ではレンジ全体でCベットしやすく、OOPの場面でも高頻度で機能します。
- ウェットなボード(987ツートーンなど):OOPで受けている場合は特に、エア(何もない手)のCベットを絞り、チェックで様子を見る選択肢を増やします。
コールで参加した場合
UTGのオープンに対してMPがコールする場合、ポストフロップはUTGに対してIPを保てます。TT・99やAJs・ATsのような中堅ハンドは、この「UTGに対してだけはIPになれる」性質を活かして、フロップ以降の判断に幅を持たせられます。ただし後ろにCO・BTN・SB・BBが残っている以上、誰かがコールやスクイーズで参戦してくればマルチウェイやOOPの展開に変わる点は常に意識しておく必要があります。
MPのよくある間違いTOP5
1. UTGと同じ感覚でレンジを絞りすぎる
「前が怖いから」という理由でUTG並みの17.5%程度まで絞ってしまうミスです。MPはUTGより4ポイントほど広い約21.7%が標準であり、絞りすぎると本来参加すればプラスになるはずのハンドを見送る機会損失になります。改善策としては、まず標準レンジの表をそのまま覚え、A9s・KTs・QTsなどUTGでは参加しないスーテッドハンドを意識的に追加することです。
2. COやBTNと同じ感覚でレンジを広げすぎる
逆にCO・BTNのオープンレンジを見て「MPも同じくらい広げていいはず」と誤解するミスです。MPはCOより6ポイントほど狭い約21.7%が標準であり、後ろに残る人数がCO・BTNより多い分、3ベットされるリスクも高くなります。改善策としては、A6s-A8sのような中間のAスーテッドはMPでは非参加であることを意識し、「両端は広く、中間は絞る」という組み方を覚えることです。
3. コールした後、後ろの人数を忘れる
UTGのオープンにMPがコールする際、TT・AJsのような中堅ハンドでコールすること自体は妥当ですが、後ろにまだCO・BTN・SB・BBの4人が残っている点を忘れ、BTNがUTGにコールする場合と同じ感覚で判断してしまうミスです。改善策としては、コールする前に「これでスクイーズされる可能性がある」と一呼吸置いて確認する習慣をつけることです。
4. 3ベットされた相手がCOかBBかを区別せず対応する
後ろから3ベットされた際、それがCO・BTNからなのかSB・BBからなのかで、ポストフロップのIP・OOPが変わることを意識せず、一律の基準でコール・フォールドを判断してしまうミスです。改善策としては、3ベットが来た瞬間に「この相手はフロップで自分より先に動くか後に動くか」を確認してからコール判断に入ることです。
5. ポストフロップで自分の立場(IP・OOP)を確認せずに打つ
MPは相手によってIP・OOPが入れ替わる特殊な席にもかかわらず、BTNのように常にIPだと思い込んでCベットを打ちすぎたり、逆にSBのように常にOOPだと思い込んで守りすぎたりするミスです。改善策としては、フロップを見る前に「今回のポットで自分は誰に対してIPで、誰に対してOOPか」を必ず一度整理することです。
具体ハンド例
ここからは、ここまでの考え方を実際の場面に当てはめた4つの例です。①標準的なオープン、②UTGオープンへのライト3ベット、③後ろのCOに3ベットされてフォールド、④SB・BBに3ベットされてIPでコール、という異なる文脈を並べているので、自分が直面しやすい状況と近いものから確認してみてください。
例1:標準的なオープンが通る場合
MPでK♠Ts(KTs)を持ちオープン(2.5BB)。CO・BTN・SB・BBが全員フォールドしポットを獲得しました。
例2:UTGのオープンに対するライト3ベット
UTGがオープン。MPはA♦5♦(A5s)で3ベットしました。UTGがフォールドしポットを獲得しました。
A5sはAのブロッカーを持ち、コールされてもフロップでナッツフラッシュドローやAヒットの目が残る、ライト3ベットの代表的なハンドです。QQ+・AKs・AKoのバリュー3ベットにこのタイプを混ぜることで、3ベットレンジ全体が「プレミアムだけ」と読まれるのを防げます。
例3:COに3ベットされてOOPを避けるフォールド
MPがJ♣Ts(JTs)でオープン。COが3ベット、MPはフォールドしました。
JTsはMPのオープンレンジには含まれますが、COからの3ベットに対してOOPで戦うには基準に届きません。ポストフロップで自分が後手に回ることが確定している以上、無理にコールで追わない判断が手堅い選択です。
例4:BBに3ベットされ、IPを活かしてコール
MPがA♥Js(AJs)でオープン。BBが3ベット、MPはコールしました。
BBからの3ベットはポストフロップでMPがIPを保てる場面です。同じAJsでもCOやBTNから3ベットされた場合はコール基準が一段厳しくなりますが、IPを保てるこの場面ではコールが選択肢に入ります。トップペア・トップキッカーがヒットし、IPの優位を活かして相手のチェックに対して主導権を握りやすい展開です。
相手タイプ別の調整(エクスプロイト)
標準レンジは「後ろの全員がどんなタイプか分からない」状態の初期値です。MPは後ろに4人を抱える席なので、後ろの人数が多い分、全員の傾向を把握するのは簡単ではありませんが、傾向がつかめた相手がいる場合は調整する価値があります。プレイヤータイプの分類はプレイヤータイプ|TAG・LAG・ニット・コーリングステーションを参照してください。
- 後ろに3ベットの多いLAGが複数いる:標準の21.7%からさらに絞り、3ベットに対して強いレンジで返せるハンドを優先します。
- 後ろが総じてニット(タイト×パッシブ):3ベットされるリスクが下がるため、標準よりやや広げても長期的にプラスが見込みやすくなります。
- UTGが極端にタイトなタイプだと分かっている:UTGのオープンレンジがさらに絞られていると見込めるため、コール・3ベットの基準も一段厳しく見て、相手のオープンをより強いハンド帯として扱います。
よくある質問(FAQ)は下部の専用セクションにまとめています
このセクションの下に、MPとHJの関係・オープンレンジの広さ・UTGオープンへの対応・3ベット対応についてのFAQを掲載しています。あわせてご覧ください。
実戦チェックリスト:MPで迷ったら
ハンドが配られてから数秒で判断するための、確認の順序です。
- UTGはオープンしているか? → していなければ約21.7%のオープンレンジを基準に判断
- UTGがオープンしている場合は? → 3ベット・コール・フォールドの基準に切り替え、後ろにまだCO・BTN・SB・BBが残っている点を加味する
- 自分がオープンして3ベットされたら? → 3ベッターがCO・BTNならOOP前提でやや厳しく、SB・BBならIPを保てる前提でやや広めにコール判断する
- フロップを迎えたら? → 今回のポットで自分が誰に対してIPで、誰に対してOOPかを確認してからCベット頻度を決める
- 相手の情報が増えてきたら? → 後ろのタイプに応じて標準の21.7%からレンジを微調整する
練習に進む
MP戦略は概念を理解するだけでなく、実際にレンジを動かす反復練習で身につきます。
- まずはオープンレンジの全体像を目で確認する → ゴトーレンジヒートマップ
- オープン・3ベット対応を出題形式で反復する → プリフロップGTOトレーナー
- 実戦の意思決定に慣れたら → ポーカーハンター(ポカハン)で場面ごとの判断を積み重ねる
MPの前に座るUTGの戦略はUTG完全攻略ガイド、後ろに座るCO・BTNの戦略はCO完全攻略ガイド・BTN完全攻略ガイド、9-maxのポジション全体像は9-maxポジション完全ガイドもあわせてご覧ください。ブラインドからの視点はSB完全攻略ガイド・ブラインド対決の戦略・BBディフェンス完全ガイドを参照してください。
まとめ
- MPは9-maxで言うUTG+1〜MP帯を指し、6-maxでは実質HJに相当する「前に人が残ったまま決める中間席」
- オープンレンジは約21.7%。UTG(約17.5%)より広く、CO(約27.9%)より狭い中間の広さ
- UTGのオープンに対しては、後ろにまだ4人残っている点を加味してBTN・COよりやや厳しい基準でコール・3ベットを判断する
- 後ろから3ベットされた際は、CO・BTN(OOP)かSB・BB(IP)かで対応の厳しさを変える
- ポストフロップは相手次第でIP・OOPが入れ替わるため、毎回「今回は誰に対してIP・OOPか」を確認してから打つ