トーナメントでプレイの良し悪しを測るとき、「チップが増えるかどうか」と「最終的な賞金が増えるかどうか」は、似ているようで一致しません。この差を生むのが cEV と $EV という2つのものさしです。
cEV と $EV の定義
cEV(チップEV)は、その判断で平均してチップが何枚増減するかを表します。一方 $EV(ドルEV)は、最終的に手にする賞金がいくら増減するかの期待値です。キャッシュゲームでは1チップ=一定の現金なので両者は同じ向きを指しますが、トーナメントではそうなりません。
なぜズレるのか — チップの非線形性
トーナメントのチップは賞金プールという有限のパイを取り合う「持ち点」にすぎず、増やすほど1枚あたりの価値が逓減します。スタックが2倍になっても、得られる賞金期待は2倍にはならないのが目安です。だからチップを大きく失うリスクは、同じ枚数を得るメリットより重く評価されます。この非線形性こそ、cEV と $EV がずれる根本原因です。賞金期待を見積もる代表的なモデルが ICM(独立チップモデル) です。
序盤・ディープは cEV 寄り
賞金がまだ遠い序盤やディープスタックでは、チップの非線形性はほとんど効きません。この局面ではほぼ cEV と $EV が一致するため、純粋にチップ最大化(cEV)で攻めて問題ないのが目安です。
終盤・バブルは $EV(ICM)寄り
賞金が現実に絡んでくるバブルやファイナルテーブル付近では、$EV 基準に切り替える必要があります。cEV 上はわずかにプラスでも、敗退リスクを賞金で評価すると $EV ではマイナス、というスポットが頻発します。こうした「降りる理由」を定量化したのが リスクプレミアム です。
まとめ
cEV はチップ、$EV は賞金のものさしです。チップが非線形に逓減するトーナメントでは両者がずれ、序盤・ディープは cEV 寄り、賞金が絡む終盤・バブルは $EV(ICM)寄りで判断するのが基本方針になります。全体像は トーナメント戦略ガイド で確認してください。